今、僕の短い人生の中で最大の誘惑が目の前にある…

 この子に初めて逢ったのは太平洋の海の上。
 とても気が強くて、逢ったその時に思いっ切り頬を叩かれた。
 顔は万人が万人、可愛いっていうのは僕も認める。
 だけど、事あるごとに僕を馬鹿にする。
 僕はそんなに気の強い人は苦手だから、距離を置いてたんだ。
 職場が一緒だから、その時だけは我慢してた。
 私生活では、接触することもないしって安心してたんだけど…
 学校も一緒の所に転校してきて、クラスも一緒。
 席はほんの少しだけ離れてるけど、それでもそんなに離れてない。
 そしてとうとう、住む所まで一緒になってしまった。
 更には、職場の命令で一緒の行動をすることって…




〜夢の泪は温もりの中で〜

書イタ人:しふぉん




 朝、目を覚ますと同時に彼女・アスカも目を覚ます。
 もう5日間も続けられてる。
 もう習性って言うか、習慣っていうか、慣れてきた。
 ユニゾン訓練。
 二人の息を合わせて、使徒に対して同時に攻撃を仕掛ける。
 それが成功しない限り、使徒を殲滅することはできない。
 だから、朝起きてから寝るまで僕とアスカは一緒に行動する。
 食事は同じように噛んで、同じように飲み込む。
 歯磨きも同じように磨いて、同じように漱ぐ。
 何から何まで呼吸を合わせる。
 それが訓練だった。





 3日目の日、アスカは一度ここから逃げ出した。
 逃げ出したって言い方だと、語弊があるかも知れない。
 ただ、怒ってそれをぶつける場所が欲しかっただけ。
 追いかけた僕が見つけた時、コンビニで冷蔵庫に並ぶ缶をただ眺めていた。
 ぼんやりとしていて視線は缶だけど、缶を見ていない。
 心の整理を必死でしていただけ。
 もちろん、アスカは財布なんか持たずに家から飛び出したんだから買えるわけもなくって、僕が持ってきた財布で軽く食べ物と飲み物を買って公園に行った。
 その後のアスカはいつもの様に強気な彼女に戻ってた。
 コンビニで見た思いつめた表情は、思い出してもあまり見たくない。
 なんていうか、アスカには元気な笑顔が…
 僕に手を上げて、怒ってる顔がすごく似合う。
 そんな気がした。

『傷つけられたプライドは10倍にして返すのよっ!』

 その台詞に、僕は呆れた顔はしたけど、内心はホッとした。

 その後、僕はこの一件を少し後悔した…
 訓練中に蹴られること多数。
 叩かれること、数え知れず。
 「馬鹿っ!」という台詞にいたっては、一日で千の桁が0に変わる位は言われたと思う。
 僕も僕なりに必死なんだけどね、少しはわかって欲しいな…
 そして、今を迎えるまでアスカを女の子として意識したことなんかなかった。





 翌日が決戦日と迫った夜。
 僕たちの保護者…ミサトさんは仕事の為に帰ってこれないって連絡があった。
 二人っきりの夜。
 もちろん僕はそんなことには頭は回ってなくって、ただミサトさんが居ないことで今夜も罵詈雑言の嵐が吹き荒れる…って思ってた。
 だけど、その事実に気づいたのはアスカだった。

「ミサトはぁ?」

 ぬれた髪をタオルで拭いながら冷蔵庫の中の牛乳を飲み始める。
 直接飲むのはいつもやめる様に言ってるけど、結局やめてくれる気配もない。
 まぁ、僕はそんなに飲むほうじゃないし、嫌がる人もいないだろうから構わないけど。

「仕事、今夜は徹夜だってさ、さっき連絡があったよ」

「そっ、じゃぁ今夜は二人っきりってわけね。」

 いつの間に着替えたのか、タンクトップにホットパンツ姿のアスカは、リビングに敷いてあった布団をおもむろに抱え上げると、隣の部屋へと運び出す。
 そして、そのまま後ろ足で襖を器用に閉める。
 つい最近まで襖にさえ触れたことなんかないとは思えないほど器用に。
 日本人は安全意識がどうとか言ってたけど、その利便性を十分に堪能してるし、
 そんなことを考えていたら、急にふすまを開けて四つんばいの状態で、こっちを睨み付ける。
 そんな厳しい顔で睨みながら言わなくったって、大丈夫だっていうのに。

「これは決して崩れることのない『ジェリコの壁』」

「は? はぁ…」

 『ジェリコの壁』がなんだか知らないけど、崩れない壁ってことだろう。
 つまり、入ってくるなって事でしょ?
 まぁ、そんなつもりは全くないから適当に返事をする。

「この壁をちょっとでも越えたら死刑よ、子供は夜更かししないで寝なさいっ!」

 言い終わるや否や、力の限り思いっきり襖を閉じる。
 近所迷惑になっちゃうよ…まったく。
 さて、僕も寝ようかな…って思ったけど、明日に迫った決戦に僕は心配で眠れなくなった。
 小さな音量で僕の耳元で流れる流行の曲を聴きながらユニゾンを頭の中で反復する。
 時間ばっかりが流れていて、そのうち落ち着いて寝れなくなってた。

 結構な時間が流れたと思う。
 家の外では物音もなく、道路を走る車の音さえ聞こえなくなっていた。
 そんなとき突然に、僕の後ろで襖が開いた。
 僕は反射的に支えていた腕から頭を下ろし、寝たふりをする。
 もちろん、聞いていた曲も僅かに指先を動かしてさり気なく止める。
 曲が消えた耳には、彼女の足音が変わりに入ってくる。
 遠くに救急車の音も聞こえる。
 足音は数秒間続くと、扉を開ける音が響き、束の間の静けさが再び現れる。
 ほんの少しだけ目を開けて様子を伺うけど、特に何かが変わるわけじゃない。
 水音、扉の音、足音と続けざまに聞こえてくる中、僕はまだ寝た振りをしていた。
 ゆっくりと規則的に近づいてくる足音。
 寝ぼけているのか、何歩かに一歩足音を立てる。
 そしてどんどん近づいてくる足音は、僕の前を横切っ……らなかった。
 ふと目の前で聞こえた足音は、その場で止まり。
 何か軽いものが布団に横たわる音と、軽い振動が僕を襲った。
 違和感に目を開けてみれば…そこには普段にない、物静かなアスカがそこに居た。
 寝ぼけて僕の隣に…現れたんだ、と思う。

 そう今、目の前には年齢不相応に発達した胸があって、普段の勝気な雰囲気なんかない、すまし顔のアスカが寝ていた。
 こんな状況で、暴走しない男なんか居ないと思う。
 僕もそんな一人だって今更ながらに自覚させられる。
 その澄ました顔には、女を感じさせる要素がふんだんに盛り込まれいて、
 時折、僅かに揺れる長い睫は色っぽいし、、
 すらっと伸びた鼻筋には同世代には絶対にない凛々しさがあって、
 そして何より…僅かに開いた唇からは、なんとも言えない香りを漏らしていて…
 僕の理性を破壊していく。
 その柔らかい唇を奪いたい。
 それだけが僕の頭を満たしていく。
 そんなことしちゃ駄目だって思う気持ちがどんどん朝日の中の霧みたいに消し去られていく。
 僕の体はアスカの唇を奪う為に行動を起こしていた。
 アスカの寝顔が次第に僕の視界を埋め尽くしていく。
 僕の視界の中すべてがアスカで満たされたとき…
 アスカの唇が僅かに揺れた。
 そして毀れ出した言葉と共に、その閉じられた瞳から涙が溢れ出していた。

「マ…マ…」

 僕の衝動はその言葉と共に消え去った。
 僕は、なんて事を…
 変わりに襲ってくる罪の意識。
 次第に目元に浮かぶ涙は大きくなり、やがてアスカの頬を伝って枕に吸い込まれる。
 アスカの手に力がこもり、握り締めたシーツに小さな皺を残す。
 僕はいつの間にか、アスカの頭を抱きしめていた。
 胸元で喉をしゃくらせながら、静かに涙を流し続けている。
 シーツを握り締めていた手は代わりに僕のシャツを握り締めていて、必死で自分の胸元に引き寄せていく。
 左手をアスカの頭の下から背中に回し、軽く抱きとめる。
 開いた右手で、アスカの頭を静かに梳く。
 何で泣いてるのか、理由なんかどうでも良かった。
 庇護欲が出たのかもしれない。
 ただ、泣き止むまでずっとそれを繰り返していた。


 空に煌いていた星たちがその輝きを霞ませる頃、僕のシャツを握り締めるアスカの手が緩んだ。
 しゃくり続けて揺れていた胸も今は、静かにゆったりとしたリズムを刻むだけ。
 しびれて動かない左手の代わりに枕をそっと首の下に差し込み、タオルケットをそっと掛ける。
 今頃になって、急激に恥ずかしさが込み上げてくる。
 僕が同じ布団で寝ていたなんて知られたら、命がないな…
 そう思いながら僕が布団を出ようとしたとき、アスカの両腕が僕の首に回された。
 ・・・・・
 ・・・・
 ・・・
 ・・
 ・
 えぇえぇぇぇぇぇっ!?
 人生二度目の誘惑に…あっという間に僕の思考は占拠された。
 アスカの顔がさっきより近くにある。
 軽くあげた顎と閉じられた瞳は、まるで僕にキスをねだってるみたいで…
 僕の理性と言う名のサムライは瞬殺された。
 いや、自ら切腹したのかもしれない。  理性の壊れた僕は、ドラマの中で見たみたいに首をわずかに傾けて…
 アスカの唇へと引き寄せられていく。  もちろん、僕はキスの仕方なんか知らない。
 軽く唇を重ねるだけ。
 そして、僕らの距離が0になったとき…  その感触は、僕の心を一瞬にして虜にした。
 溶けるような気持ちよさに包まれて、その暖かさに囚われていく。

 一瞬だったかもしれないし、結構長い時間していたのか覚えは無いけど、
 罪悪感が再び首をもたげて、襲いかかってくる。
 僕は直後に布団を飛び出した。
 予備のタオルケットを出して、カーペットの上に直に寝転ぶ。
 自分の意志の弱さに、僕は自分が許せなくなった。
 ゴメン、アスカ…
 そう思いながらも、寝不足の僕の意識は呆気なく覚醒状態を手放した。





『来たわねぇ…今度は抜かりないわよ、
音楽開始と同時にATフィールドを展開。
後は作戦通りに、二人ともいいわね?』

「「了解」」

 ここ数日の訓練の成果なのか、僕とアスカの返事はそろってる。
 ステレオで聞こえてるような錯覚さえある。

「いいわね? 最初からフル稼働、最大戦速でいくわよっ!」

「わかってるよ、62秒でケリをつける、」

 訓練最終日には僕とアスカのユニゾン訓練はほぼ完璧といって良いほど完成していたんだ。
 失敗はない。
 寝不足で、ちょっとハイテンションになりかけてるけど、特に問題ない。

『目標0地点に到達』

『外電源パージ…、』

 ミサトさんの合図と共に外部電源ソケットが圧縮された空気に押し出されて飛び出す。
 寸分の間もなく電池残量を示す稼働時間計が動き出す。

『発進、』

 プラグ内に急激な加速衝撃と、この一週間嫌というほど聞かされた曲が流れ出す。
 幻想的な曲とは裏腹な戦いの踊り。
 普段とは異なり地上にたどり着く前にはずされた拘束は、僕らをそのまま天高く持ち上げる。
 訓練で身につけられた動きを迷うことなく遂行する。
 手元から電磁柵発生装置の装備された槍を取り出し、使徒に向け二機同時に投擲する。
 コアに向け投擲された槍を使徒は片手で前後に弾く。
 だが、そこに仕掛けられた装置により使徒の体は見事に分断される。
 分断された姿を確認するよりも早く、配置された火器を手に取りそして放つ。
 アスカの大型火器から放たれる爆炎と僕のパレットライフルから出る銃弾が二体の使徒の視線を釘付けにする。
 射撃兵器は使徒に対して効果が無いことは、周知の事実だ。
 弾切れになると同時にアスカの隣にたどり着く。
 そして、それと同時に使徒の面から光が飛び出す。
 バックステップなんかじゃ間に合わない。
 即座に選んだバク転で後退を始めると、隣のアスカも同様に後退してる。
 これは作戦であらかじめ決められた動きでもなんでもないのに、それがあたかも決められた未来のように動く。
 それが気持ちいい。
 なんていうか、心が通じたような…不思議な気持ちよさに溶かされる感じがする。
 目的の地点まで後退を繰り返し、そして遮蔽版を地面から呼び出す。
 後はここに使徒を誘導するだけ。
 光線で大きく歪んだ遮蔽版から身を乗り出し使徒に向けて再びライフルを斉射する。
 いないっ!?
 斜線上にいる筈の姿はそこには無い。
 『くるっ!』
 アスカの声が、聞こえた。
 いや、聞こえたんじゃない、感じたんだ。
 無意識に機体を左に滑らせる。
 確認しなくても解る。
 そこには切り裂かれた装甲版。
 そして、降り注がれる炎の槍がその視界を埋め尽くす。
 最後の一振りの槍が襲い掛かると同時に“僕ら”は動いた。
 言葉も要らない。
 アスカの動きを感じることができるから。
 その視界が復活する前に“僕ら”は目前に詰め寄る。  動きを止めた使徒に右の拳を打ち上げる。
 勢いのままに左の足を振り上げ。
 もうあらかじめ決められた動きなんかしてないのに、それが手に取るように分かる。
 振り上げた足をその勢いのまま叩きつける。
 強制的に重ねあわされた使徒の体は、再びひとつに戻ろうとしている。
 『チャンスっ!』
 感じたアスカの声に流されるまま、僕は体を宙へと投げ出す。
 今朝感じたあの気持ちよさと、なんか似てる。
 蹴り出された足が使徒の中枢を捉えた後…
 僕の記憶は炎の色に包まれながら薄れていった。





 「シンジっ!!! アンタ最後にバランス崩して…って」

 最後の最後でコイツは見事にユニゾンをぶち壊してくれた。
 コアが“アタシ達”の蹴りに耐え切れず爆散した瞬間、コイツはアタシの弐号機に寄りかかってきて…
 アタシを下敷きにその場で動かなくなってしまった。
 おかげで、アタシの見事な技は披露されることなんかない。
 せっかく美しく決めようとしてたのにっ!
 コイツのせいでっ!
 って、イジェクトされた初号機のプラグを覗き込んでみれば…
 うっすらと笑顔を浮かべながら、眠ってた。
 そっか…コイツあの時、寝てなかったんだ。

「ゆうべはちょっと格好良かったもんね、シンジにしては…」

 そう、アタシが昨夜見た夢は、いつもと違っていた。
 ママに会うために幼いアタシはサルの人形を抱えて、いつもの様に白い廊下を走っていた。
 幾つかの扉を過ぎて、ママの部屋に入る。
『ママっ! 今日も来たよっ! ママっ!こっちを見てよっ!…』
 良い子にしてたら、ママは振り向いてくれる。
 そしてアタシは、選ばれたのだ。
 良い子の証を手に入れたと…ママが振り向いてくれると、
 そう信じてママに… けど、ママはアタシの首筋をその暖かい手で包んで…

 いつもなら…そこで誰かが来て…夢が覚める。
 だけど、昨夜はちょっと違ってた。
 首に回るはずの暖かい手は、アタシの背中にまわって優しく抱きとめてくれて、
 訳も分からず泣き続けるアタシの髪を、優しく梳いてくれた。
 夢の中なのに…それが分かってるのに、アタシは嬉しくてしょうがなかった。
 ママの胸にしがみついてずっと泣いてた。
 ずっと前から、ママに抱きしめて欲しかった。
 現実ではもう叶わない。
 だからせめて夢だけでもって、そう思っても…
 夢でさえも、アタシは見ることが叶わなかった。
 それが叶えられた。
 それだけで良かった。
 なのに、ずっと…アタシを抱きしめてくれてた。
 まるでそれが現実であるかのように。

 アタシは多分…ホントに抱きしめられていたんだと思う。
 夢を見て泣き続けるアタシを、ずっと。
 アタシがそれに気づいたのは、朝。
 泣き腫らした目が少し痛かった。  だけど、いつもほど腫れているわけでもなくて、  周りを見渡すと、アタシはリビングの隣の部屋で寝ていた筈なのに…、リビングの布団の上で寝ていた。
 そこで寝ていたはずのシンジは、リビングの隅でタオルケットに包まって小さくなって寝ている。
 多分、アタシが寝ぼけてシンジの布団を奪い取ったんだろうって事は、想像がつく。
 次第に上がってきた気温に、シンジは寝返りをうつと…
 そこには、濡れたシャツが見えた。
 白地に赤い丸と平常心ってプリントされたシャツは、
 赤い丸がえんじ色に変わっていた。
 所々が白っぽく変色してるし、着ているだけじゃ絶対出来ないような皺がある。
 そして、アタシの寝ていた枕は少し濡れているだけ。
 あの夢を見て、アタシはいつも枕を濡らす。
 目を覚ました時に感じる、濡れた枕の不快感がアタシは嫌いだった。
 だけど、今朝の枕は不快感を感じるほどじゃなくて…

 その時にアタシは何が起こっていたか理解った。
 アタシが夢の中で抱きついていたママは…
 シンジなんだって。
 うっすらと残る記憶もあれはホントはシンジだって言ってる。
 そして、濡れたシャツはアタシの涙のせい。
 ずっと起きてて…
 魘されるアタシを抱いて…
 髪を梳いていてくれたのだと。
 幼子を寝かしつけるみたいに背中をやさしく叩いて、アタシが泣き止むようにって…。
 その証拠に、シンジのシャツからはアタシのシャンプーの匂いがしっかりと付いていて、その左腕は丁度アタシの頭ひとつ分だけ赤くなってた。
 そう、間違いなくあれはシンジ。
 そして、さらにかすんだ記憶の中に…あいつに抱きついて…
 って、そこまではいくら寝ぼけててもしないわよね。
 でも…

「ゴメン…アスカ…」

 寝言で、アタシに謝るなんてやっぱり…まぁ、いいわ、今日はね。
 コイツがアタシの夢に影響を与えたことは間違いない。
 お陰でアタシの願いは叶ったんだから、今日は特別に許してやるわ。

「うっ…うぅ…」

 さっきまではこいつの考えてることなんか、隅から隅までわかったけど寝ちゃったら…さすがに無理よね。
 コイツの苦しそうな寝顔を見てたら、インテリアの上って言うのがすごく寝ずらいってことだけ分かるけどね。
 それとも、夢の中でアタシに折檻されてるのかもね。

「しょうがないわね、ちょっと寝不足になったからって、この軟弱者…」

 LCLの残るプラグ内を排水して、シンジの頭をそっと持ち上げる。
 そして、あたしの足の上にそっと下ろして、コイツの寝顔を楽しむ。
 あと十分や二十分は迎えに来るまで時間はあるだろうしね。

「ゆうべはありがと…シンジ、代わりにアタシが膝枕してあげるんだから感謝しなさいよ?」

 一瞬、目が覚めたような感じでむずがってたんだけど、返事なんかなくって、
 シンジは凄く安らかな表情でアタシの足に顔をうずめてるだけだった。





モドル